トーキンは、車載機器、民生機器、産業機器など幅広い分野において、豊富なノイズ対策部品のラインアップと長年の実績を持つメーカーです。

トーキンが新たにリリースした車載向け分割型EMIコア「ESD-SR-XVEシリーズ」は、独自開発のMn-Zn(マンガン・亜鉛)系フェライト「5HT」材と「HR1」材を採用し、低周波と高周波それぞれの帯域で高いノイズ抑制効果を発揮する新製品です。特に「HR1」材はNi-Zn(ニッケル・亜鉛)系フェライト材に匹敵する高周波性能を、より低コストなMn-Zn材で実現している点も大きな特長です。

さらに、車載用途に求められる125℃対応・AEC-Q200準拠・難燃性UL94 V-0をすべて満たし、従来はカスタム品として提供されてきた信頼性を標準品にも展開することで、車載EMI対策のファーストチョイスを目指したラインアップとなっています。

EMIコアESD-SR-XVEシリーズ
・分割型・スナップオン構造で後付けが可能
・多様なケーブル径に対応する3サイズ
・独自開発のMn-Zn材でAM帯・FM帯に対応
・Ni-Zn材からの置き換えに最適

・車載グレード対応

 125℃対応、AEC-Q200準拠、難燃性UL94 V-0に対応

EMIコアの製品ラインアップ

トーキンのEMIコアは、低周波帯域から高周波帯域まで幅広いノイズ対策をカバーするため、Mn-Zn系フェライト材とNi-Zn系フェライト材の双方を活用した総合ラインアップで構成されています。


低周波帯域向けラインアップ体系
低周波帯域向けEMIコアは、Mn-Zn系フェライト材を使用した製品シリーズです。 Mn-Zn系フェライト材は透磁率が高く、kHz帯から10MHz程度までのAM帯域におけるノイズ抑制に高い効果を発揮します。
EMIコアは、形状により「非分割」タイプと後付け可能な「分割」タイプに分類されます。非分割タイプは、特にS15H材を使用した「ESD-R-SRシリーズ」が、低周波ノイズに対して最も高い抑制効果を発揮する超高透磁率材として位置づけられています。
今回、分割タイプとして新たに、Mn-Zn系5HT材を採用した新製品の「ESD-SR-XVE-Tシリーズ」をリリースし、低周波ノイズ抑制に優れるとともに、車載向けに125℃対応・AEC-Q200準拠・難燃性UL94 V-0という高信頼性要件を満たした適合性の高いラインアップとなっております。



高周波帯域向けラインアップ体系
高周波帯域向けEMIコアは、従来Ni-Zn系フェライト材を使用した製品群で構成されており、Ni-Zn系700L、1400L材を使用した「ESD-SR-H / HLシリーズ」は、10MHz帯から数100MHzまでのFM帯域のノイズ抑制に高い効果を発揮します。
新製品の「ESD-SR-XVE-R1シリーズ」は、Mn-Zn系HR1材を採用することで、Ni-Zn系700L、1400L材と同等の性能を実現しました。さらに、車載向けに125℃対応・AEC-Q200準拠・難燃性UL94 V-0をクリアし、高耐熱・高信頼性と広帯域ノイズ対策の最適化を両立しています。Mn-Zn材は従来のNi-Zn材と比較してコスト面で有利であり、新規採用はもちろん、従来のNi-Zn系製品からの置き換えにも適しています。



コア材質と効果周波数範囲
EMIコアのラインアップには、トーキンの代表的なフェライト材料であるNi-Zn系700L材、Mn-Zn系HR1材、Mn-Zn系5HT材があります。
下図に示すように、Ni-Zn系は一般的に電気抵抗が高く渦電流損失が小さいため、高周波帯域においても透磁率の低下が抑えられます。そのため、FM帯域を含むMHz帯のノイズに有効です。また、Mn-Zn系は、高い透磁率により、AM帯域などのkHz帯域のノイズ抑制に高い効果を発揮します。
新たに開発されたMn-Zn系(HR1)は、Ni-Zn系よりも高い透磁率をもちつつ電気抵抗を上げているため、数MHz帯域でNi-Zn系より優れた性能を示し、FM帯域ではNi-Zn系と同等の特性を有します。


Mn-Zn系およびNi-Zn系フェライトコア材の効果範囲


フェライトおよびナノクリスタル材の透磁率
効率的なノイズ対策を行うためには、対象とする周波数帯域に適した材質を選択することが重要です。これは、フェライトやナノクリスタル材が、透磁率に応じて有効となる周波数帯域が異なるためです。
一般に、フェライトは透磁率が高いほど低周波帯域に有効で、透磁率が低いほど高周波帯域に適しています。このため、Mn-Zn系は主に伝導ノイズ対策に、Ni-Zn系は放射ノイズ対策に使用されることが多いです。一方、ナノクリスタル材は低周波から高周波まで広帯域で効果を発揮する特長を持っています。

各材質の透磁率と効果周波数範囲の関係を以下に示します。
Mn-Zn系S15H、S18H材は透磁率が高く、低周波帯域におけるノイズ抑制効果が大きいです。また、Mn-Zn系5H、7H、10H材は中周波帯域で効果を示します。さらに、5HT、7HT材は高透磁率を保持しつつ、高キュリー温度および高Bs特性を有するなど、幅広いバリエーションが揃っています。さらに、Mn-Zn系HR1材およびNi-Zn系700L、1400L材は透磁率は低いものの、高周波帯域において高いノイズ抑制効果を示します。


透磁率による効果周波数範囲の関係


車載向け分割型EMIコアESD-SR-XVEシリーズ

概 要
ESD-SR-XVE シリーズは、車載用途に対応した分割型のトロイダルコアです。 トーキン独自開発のMn-Zn系5HT材(低周波用)とHR1材(高周波用)を採用し、それぞれ低周波帯域と高周波帯域で優れたノイズ抑制効果を発揮します。
特に高周波帯域向けラインアップでは、従来のNi-Zn系より低コストなMn-Zn系で同等の性能を実現しているため、価格面で大きな優位性があり、新規採用だけでなく、従来製品からの置き換え提案にも適しています。

本シリーズは車載グレードに適した高耐熱ケースを採用し、構造上の工夫により特性変動を最小限に抑えています。125℃対応、AEC-Q200準拠、難燃性UL94 V-0をクリアした製品であり、これまでカスタム品として提供してきた実績を標準カタログ品として展開することで、車載用途の需要の拡大を目指しています。


特 長
  ■ 独自開発Mn-Znフェライトコア5HT材:≤10 MHz(AM帯域)に対応
  ■ 独自開発Mn-ZnフェライトコアHR1材:≤500 MHz(FM帯域)に対応
  ■ スナップオン機構により取り付けが容易
  ■ ケーブルアセンブリ後でも後付けでのノイズ対策が可能
  ■ 使用温度範囲の向上:-40℃~ +125℃(自動車環境に最適)
  ■ 難燃性:UL94 V-0(ケース)
  ■ AEC-Q200準拠

製品一覧
ESD-SR-XVEシリーズは、低周波帯(AM帯域)向けに5HT材を採用した「ESD-SR-XVE-Tシリーズ」と、高周波帯(FM帯域)向けHR1材を採用した「ESD-SR-XVE-R1シリーズ」で構成されます。各種ケーブルサイズに対応するため、小、中、大の3種類の形状をラインアップしており、合計6種類の製品構成です。


製品寸法



製品特性
EMIコアのインピーダンス特性は、一般的にコアの体積(ボリューム)が大きいほど高くなり、ノイズ抑制効果も向上します。
ESD-SR-XVE-TシリーズおよびESD-SR-XVE-R1シリーズにケーブルを1ターン(1T)巻いた際のインピーダンス特性を以下に示します。
左図のESD-SR-XVE-TシリーズはMn-Zn系5HT材によりAM帯域で高インピーダンス特性を有します。一方、HR1材を採用した右図のESD-SR-XVE-R1シリーズは、Mn-Zn材でありながらFM帯域で高インピーダンスをキープし、高いノイズ抑制効果を示します。

インピーダンス特性


アプリケーション例



まとめ

ESD-SR-XVEシリーズは、独自開発のMn-Zn系フェライト材を採用することで、低周波帯域から高周波帯域までのノイズに対し、高い抑制効果とコスト優位性を両立したEMIコアです。車載グレードに求められる高信頼性を満たしつつ、既存のNi-Zn系製品からの置き換えにも十分対応できる性能を備えている点が大きな強みと言えます。

トーキンは、ノイズ対策部品に使用されるフェライトコア材を、材料開発から生産まで一貫して手掛けており、High-μ材、High-B材など、多様な材料ラインアップを取り揃えています。今後も、磁性材料の開発力と車載市場で培った品質技術を生かし、より幅広い用途に向けて最適なノイズソリューションを提供する製品ラインアップの拡充を目指していきます。