当社は、合併を経て協業体制にある米国大手コンデンサメーカーKEMET社（以下KEMET）と相互の製品販売とサポートを行っており、その一環としてKEMET製アルミ電解コンデンサの国内拡販を推進しております。

KEMETのアルミ電解コンデンサは、幅広いラインアップに長寿命、高許容リップル電流、AEC Q200対応車載グレード品といった高信頼性製品を揃えていることが特徴で、標準タイプから導電性ポリマーやハイブリットタイプに至る製品群は、一般用途から車載機器や産業機器分野にわたり多くの実績があります。

今回は、KEMETのアルミ電解コンデンサのラインアップ概要と、日本市場において注目度の高い製品群をご紹介します。

KEMET アルミ電解コンデンサ：幅広いラインアップに高信頼製品、車載グレード品を用意

最初にKEMETアルミ電解コンデンサのラインアップ概要を表に示します。ケース形状や構造、構成を基に8タイプに分類されます。

• 様々な耐圧／静電容量／タイプ／用途に対応する豊富なラインアップ
• 他社にはないタイプ、耐圧や静電容量をカバーするシリーズ展開
• 許容リップル電流が高い＝ESR（等価直列抵抗）が低い
• 長寿命、耐振動性、高温対応、車載AEC Q200対応など高信頼性品が用意されている

タイプ	代表的シリーズ	特徴	外観例
アキシャル	PEG225, PEG226 PEG227, PEG228 PEG236	アキシャルとラジアル(crown)型、最大105℃/165℃ 長寿命（PEG124：105℃/最大27,500時間） 耐振動20G、AEC-Q200車載グレード アキシャルは日系競合他社の供給なし
ねじ端子	ALS70/71, ALS80/81	最大85℃/125℃、68～1,300,000µF、10～630VDC 長寿命（ALS80/81：105℃/最大9,000時間） 高許容リップル電流、高耐振動性、低ESL品あり
基板自立	ALC70, ALC40, ELD	最大85℃/125℃、47～240,000µF、6.3～630VDC 長寿命、高許容リップル電流、産業グレード
モーター始動	MS/MD	最大60℃/70℃、25～750µF、120～260VAC VDE認証取得 EN60252-2 6.3 mm double amp tags
ラジアルリード	ESH, EAK	最大85℃/125℃、1～22,000µF、4～500VDC 一般/産業用途、低インピーダンス、長寿命
SMD	EDH, EXV, EDT	最大85℃/125℃、1～2,200µF 4～450VDC、AEC-Q200車載グレード
導電性ポリマー	A750/A755/A758/A759 A765/A767/A766/A768	ラジアルとSMD、最大105℃/125℃、2.2～2,700µF 2.5～250VDC、長寿命、低ESR、高許容リップル電流 発火しない、耐振動30G、AEC-Q200車載グレード
ハイブリッド	A780	最大125℃、56～680µF、25～63VDC 長寿命、高許容リップル電流、耐振動30G 85℃/85%耐湿負荷対応、AEC-Q200車載グレード

上記ラインアップの中から、当社が注力している国内の車載機器や産業機器分での採用が見込まれる、「基板自立タイプ」、「導電性ポリマータイプ」、「ハイブリッドタイプ」の3タイプをご紹介いたします。

基板自立タイプ：高許容リップル電流、長寿命の産業用途

基板自立タイプの代表として、ALC70、ALC40、ELDシリーズを例に特徴を説明します。これらのシリーズは高許容リップル電流を基本とし、産業機器用途を想定した仕様になっております。

KEMETのアルミ電解コンデンサはリップル許容電流が高いことが特徴の1つです。そのメリットについて一例を示します。以下の表は、高許容リップル電流と長寿命を特徴とするKEMETのACL40シリーズと競合他社の、同電圧同静電容量品のリップル電流の比較例です。

写真：KEMET 基板自立タイプ アルミ電解コンデンサALC40シリーズ

KEMET ALC40シリーズは、競合他社製品と比較して長さが10mmほど大きいが、ライフを同じレベルに合わせた場合約1.85倍リップル電流を多く流すことが可能です。許容リップル電流を確保するために、コンデンサを複数個使用している回路では、許容リップル電流が高いコンデンサを使用することで員数を減らすことが可能になる場合があります。

ライフ面では、約1.25倍のリップル電流（3,000mAms）を許容しながら、約1.8倍（5,000時間：9,000時間）の寿命が期待できるので、高信頼性が要求される用途にも安心して使用できます。

以下は基板自立タイプのALC70、ALC40、ELDシリーズの主な仕様と特徴です。

ALC70シリーズは最大稼働温度+85℃、幅広いケースサイズと静電容量、定格電圧630Vまでのシリーズです。代表的な用途としては、インバータ、周波数変換器、モータードライブ、モーター制御、UPSシステム、平滑化、エネルギー貯蔵、代替エネルギー、充電ステーション、トラクション、高負荷電源（SMPS）、溶接、HVACなどになります。

ALC40シリーズは、最大稼働温度+105℃の高温対応で、高い許容リップル電流と105℃/最大9,000時間（リップル重畳を加味）の長寿命が特徴のシリーズである。周波数変換器、無停電電源装置（UPS）、スイッチモード電源装置（SMPS）などの高信頼性が求められる用途に適しています。

ELDシリーズは汎用的な仕様になっており、民生および産業用機器向けの一般用途になります。平滑化回路、コンピュータ、モニター、アダプター、スイッチモード電源（SMPS）などへの用途が想定されております。

導電性ポリマータイプ：低ESR、長寿命、ドライアップのリスクを解消

導電性ポリマータイプは、陰極に導電性ポリマーを使用したアルミ電解コンデンサで、低ESRで許容リップル電流が高い、動作中の発熱を抑制するため長寿命で発火の可能性は低く、また固体ポリマー電解質はドライアップ（蒸発による容量抜け）のリスクがないことが特徴です。

導電性ポリマータイプはESRが低く、標準のアルミ電解コンデンサと同様に大きな静電容量を持つので、例えばESRに起因するスイッチング電源の出力リップル電圧が問題となるような場合の解決策となります。また、ESRが小さいと必然的に許容できるリップル電流が高くなり、同じリップル電流であれば損失が減るので発熱が小さくなるメリットがあります。

以下のグラフは、標準のアルミ電解コンデンサとKEMETの導電性ポリマーコンデンサの許容リップル電流の比較例です。グラフからは、標準のアルミ電解コンデンサに対して導電性ポリマータイプの許容リップル電流が基本的に数倍以上大きく、標準のアルミ電解コンデンサは静電容量/電圧が異なってもあまり許容リップル電流に差が出ないのに対して、導電性ポリマータイプは基本的に静電容量が大きくなると許容リップル電流が高くなることがわかります。

KEMET 導電性ポリマータイプ アルミ電解コンデンサと標準アルミ電解コンデンサの許容リップル電流特性の比較

KEMETの導電性ポリマータイプには、ラジアルリード型とSMD型があります。

各シリーズともに幅広い稼働温度範囲と長寿命が特徴で、基本的に民生および産業用途を想定しております。A759シリーズは最大250VDCの高耐圧品で、現在250VDCの高耐圧品を供給できるのはKEMETだけです。主な用途は、長寿命LEDドライバ、業務用パワーアンプ、産業用電源、DC/DCコンバータ、電圧レギュレータ、デカップリングなどです。

SMD型も幅広い稼働温度範囲と長寿命が特徴となりますが、高耐圧対応とAEC-Q200車載グレード対応のシリーズを用意しております。A766シリーズは、長寿命105℃/5,000時間のライフ保証が特徴です。A767シリーズは100VDC、A768シリーズは80VDCの高耐圧品を揃えております。加えてA768シリーズはAEC-Q200車載グレード対応（63Vまで）、125℃/2,000時間のライフ保証となっています。また、A768シリーズには標準品の他に耐振動性対策品が用意されております。

写真：KEMET 導電性ポリマータイプアルミ電解コンデンサA768シリーズ　標準品（左）と耐振動対策品（右）

ハイブリッドタイプ：低ESR、自己修復機能による高信頼性

ハイブリッドタイプは、電解質に導電性ポリマーと電解液の両方を使用したコンデンサです。導電性ポリマーによる低ESR特性に加え、電解液による酸化被膜の修復性を併せ持つことで、低ESRと高信頼性を実現しています。また、電気的性能に優れる点も特徴となっております。

A780シリーズは主に車載用途向けのシリーズで、現在ラインアップを拡充中です。AEC-Q200車載グレードに加えて85℃/85％耐湿負荷2,500時間にも対応している。表面実装で、導電性ポリマータイプのA768シリーズと同様に30Gの耐振動性を有する耐振動性対策品もラインアップしております。

A780シリーズは機械的ロバスト性に優れているため、高温条件にあるモバイル機器、自動車、および航空機器など、非常に負荷の大きい環境下での使用が可能です。

まとめ

トーキンが国内市場に向けて販売を推進しているKEMETのアルミ電解コンデンサの第一の特徴は、ラインアップが非常に幅広く強力なことです。特性や性能面では、高い許容リップル電流、高耐圧、高温対応、長寿命、AEC-Q200車載グレード品が特徴となります。

今回ピックアップして紹介した、基板自立タイプ、導電性ポリマータイプ、そしてハイブリッドタイプは、基本的に厳しい環境下での使用に適した製品です。

今後、ハイブリッドタイプはラインアップの拡充を予定しており、特に車載分野へのプロモーションを強化します。また、トーキンとKEMETのそれぞれの特徴ある製品群を併売することの相乗効果が期待されております。