トーキン独自の技術により、小型でありながら広帯域・好感度を実現
振動検知アプリケーションに最適化された圧電式振動センサ見えない振動を見える化。予知保全、インダストリアルIoTのキーアイテム
近年、インダストリアルIoTの一環として、機器の稼働状態の見える化や予知保全を実現するために、各種センサの活用が重要になっています。中でもモータやポンプなど工場設備の機械振動監視用として、振動センサの需要が高まっております。
このような需要に対して当社では、自社開発素材と独自構造の採用により故障予知などの振動センサアプリケーション用に最適化し、使用環境に合わせた圧電式振動センサを展開しています。トーキンの圧電式振動センサは扱いやすさと高いコストパフォーマンスを特長としており、その中の代表製品として、小型・薄型・軽量が特長の「VS-BVシリーズ」と、防水・耐油性能を備えた「VS-JVシリーズ」を紹介するとともに、圧電式振動センサの優位性と実証実験をともなったアプリケーション例もご紹介します。
VS-BVシリーズ:厚さ2.9mm、重さ1gを実現。狭所への
組み込みに最適。
VS-JVシリーズ:IP67相当の防水防塵と絶縁構造により、
工場などの既存設備への後付けに適する。
工場のIoT化が加速。機器の状態監視や予知保全はセンシングが鍵
産業におけるIoTであるインダストリアルIoTの動きが活発になっている。主に生産性向上を目的とし、その1として生産ラインのダウンタイム短縮が期待されている。ダウンタイムには機器や設備の故障はもちろん、保守保全のためのライン停止時間も含まれる。近年保全に関して、計画事後保全や予防保全から、保守が必要になる故障の予兆を検知し保全を行う予知保全へ移行する傾向が高まっている。機器や設備の稼働可能時間を最大限利用し、故障発生前に手立てをすることで、ダウンタイムと費用を最小限にできることが理由である。
これを実現するには、工場の機器や設備の稼働状態をデータ化する、つまり見える化を行ってそのデータを解析することが必要となる。古くは機器の音や振動の異常を人間の感覚でとらえる手法が使われていたが、見える化の実現には定量的なデータを取得しなければならない。それを担うのは各種センサであり、特に工場や製造ラインにおけるモータ、ファン、ポンプ、ベアリング、工作機械などの故障の予兆をとらえるには振動の監視が有用であることから、振動センサの需要が増加している。
工場の機器・設備の振動監視に最適な振動センサとは
振動センサとは物体の周期的な動作を測定するセンサで、大きく分けて変位センサ、速度センサ、加速度センサに分類されます。この中で、加速度センサは特に高周波領域で優位性があり、機械振動の監視用として注目されています。
主な加速度センサとして圧電式振動センサとMEMS加速度センサが挙げられるが、それぞれ検知できる加速度や周波数に違いがあります。工場の機器や設備などの監視対象は、それぞれ特有の振動(加速度)や音(周波数)を持ち、その大小や範囲は様々です。したがって、振動センサには感度がよく周波数範囲が広いことが求められます。当社はこのような要求を満たす振動センサとして、独自技術により最適化を行った「圧電式振動センサ」を開発しました。
圧電式振動センサの特長:広帯域・高感度・小型・低背・アンプ内蔵
圧電式振動センサの動作原理は広く知られるところであり、圧電セラミックにより振動などの機械エネルギーを、それに応じた電気エネルギー(電荷)に変換するものです。トーキンの圧電式振動センサは、高い感度と広い周波数帯域を特長とし、アンプを内蔵しながらも小型薄型を実現しています。これは当社独自のセラミック材料の最適化と、発生電荷を効率よくとらえる独自構造によるものです。これらの特長が振動監視アプリケーションに適する理由を以下にご説明いたします。
工場にはモータやベアリングなど様々な機器や設備があり、その振動の大きさや周波数帯域も様々です。MEMSなど他の振動センサは測定領域が限られておりますが、トーキンの圧電式振動センサは他と比較して広帯域高感度を実現したことで、多種多様な振動検知に対応。周波数は10Hzから15kHzで、この範囲でほぼフラットな特性を持ちます。下図は、他の振動センサとの感度(検知加速度)と周波数のカバレッジの比較、および機器や事象との関連を示しています。トーキンの圧電式振動センサは、工場の設備・機器を幅広くカバーできることがわかります。
振動検知アプリケーションは既存の機器や設備で利用されることが多く、非常に狭い場所に振動センサを取り付けなければならない場合も少なくありません。当社ではこの点に着目し、小型・低背であることを重視したタイプを用意しました。一般に小型化と感度は背反関係にあるが、後述する独自構造を用いたことで小型でも高感度を実現しています。
一般的な振動センサでは、センサ出力の送り先である機器類への接続にはシグナルコンディショナーやチャージアンプが必要になります。トーキンの振動センサにはアンプが内蔵されているため、機器類に直接接続することができます。また駆動電源は3~5Vの定電圧であることから、各種測定器やPLCはもちろん、マイコンモジュールとも直接接続が可能なので、システム構成が簡素化でき既存スペースへの設置も容易になります。
圧電式振動センサに用いられた独自技術
前述の特長の実現には、トーキンの独自技術が用いられております。
微小な振動からも大きな出力を得られるように最適化した圧電セラミックを採用。これは自社で素材から開発を行っている、素材型デバイスメーカーならではであるためです。
圧電式振動センサには大きく分けて、ベンディング方式、シェア方式、圧縮方式の3種類があり個々に特徴が異なります。トーキンは小型で高感度が特長のベンディング方式を採用しているが、圧電セラミックが発生した電荷を効率よく捕獲する独自の振動子構造としました。図のように、金属板に対して片面にのみ圧電セラミックを貼り付けたユニモルフ構造と、圧電セラミックの貼り付け位置の最適化により、電荷の相殺を小さくし感度を向上させています。
圧電式振動センサを使ったアプリケーション例
以下に、圧電式振動センサによる振動監視アプリケーションの例、回転機械の異常確認例、振動センサの適切な取り付け例を示す。いずれもトーキンが実証実験などから得たデータを基にした参考例であり、対象や条件が異なれば合致しない場合があることを了承の上参考にしていただきたい。
給排気ファンの振動を振動センサにより監視し、劣化の予兆を観測したアプリケーション例です。トーキンの社屋に設置されているファンの振動を継続的に監視し、振動レベルの増加を劣化の予兆としてとらえメンテナンスを実施したところ、振動レベルは大幅に下がり、交換したファンの軸心には摩耗が確認された例となります。劣化の予兆と示す振動レベルは、データの蓄積と実際の事象確認の繰り返しによって見出す必要があります。なお、使用した圧電式振動センサは、防水防塵および耐油性能を備えたVS-JVシリーズのVS-JV10Aです。
設置個所:給排気FAN(トーキン社屋屋外に設置されているもの)
測定条件:測定間隔 2時間、サンプリング 0.441ms、1回の測定時間 約3.5s、測定期間 約6か月
回転機械は、回転部に加えギアやベアリングなどの部品で構成されており、各部位は固有の振動周波数を持っております。以下のグラフは、図のような回転機械が発する振動のFFT解析の一例で、運転中の稼働音が異なる2台(赤と青)の比較です。それに下表で示した各部位固有の周波数帯域を併記しました。
このFFT解析結果から、青線の方の回転機械のベアリングに該当する周波数帯の加速度(振動)が大きいことがわかり、それが稼働音の差異となっており、原因としてベアリングの摺動部の劣化が推定可能です。この例は稼働音が異なる2台の比較であるが、1つのものの正常時のデータ(メンテナンス直後など)があれば、それとの比較で異常の推定が可能になります。
部位 | ベアリング | ギア | カップリング | 回転部 | 固定部 |
周波数帯(Hz) | 3k~10k | 1k~5k | 50~200 | 30~100 | 10~50 |
異常原因 | 摩耗、焼付 | 歯欠損、噛み合い異常 | ミスアライメント | アンバランス | ガタ、固定ボルト緩み |
検知方法 | 振動、AE、音、熱 | 振動、AE、音響 | 振動、熱 | 振動 | 振動 |
なお、表には各部位の周波数帯の他に、代表的な異常原因とその検知方法を含めています。着目すべきは、発生している振動の周波数帯域は10Hzから10kHzと広く、いずれの周波数帯の異常検知方法として振動検知が有効であり、それには検知周波数帯域の広い振動センサが有用となる点であります。
振動センサは取り付け方法や取り付け場所の状態によって、検知できる周波数帯域が変化し、十分な性能を発揮できない場合があります。以下に基本となる条件と、取り付け方法による周波数に対する感度変化の例を示します。
マグネット固定の例では、凹凸面に取り付けた場合明らかに十分な性能を得られないことがわかります。接着固定とネジ固定では、センサの周波数範囲仕様の15kHz付近までフラットな特性を得られています。取り付け場所の条件と取り付け方法は、機械的振動を検知する場合の重要な検討事項であることをご理解ください。
トーキンの圧電式振動センサのラインアップ
工場の機器や設備の振動検知アプリケーションに最適化された圧電式振動センサの代表製品2品種の概要と、全ラインアップおよびオプションをご紹介します。
およそ10mm角の超小型サイズで、高さ2.9mmの低背構造が特長。工作機械や製造設備など狭い箇所にセンサを組み込む場合に最適な仕様となっています。小型でありながら感度周波数特性は10Hz~15kHzまで、ほぼフラットな特性を実現しています。
広帯域・高感度に加え、生産現場で使用されるモーターポンプなどの既存設備への後付けセンサを想定した仕様のシリーズ。耐油、IP67相当の防水防塵構造、加えて絶縁および二重シールド構造によりノイズの多い環境下でも使用できます。
アプリケーション構築のための各種オプションが用意されています。
マグネットベース(各種)
・簡単にセンサの取り外しが可能
(高周波数域の測定には不向き)
アタッチメント(JV用)
・定期交換が必要な場合の仲介用
・曲げ振動発生時に、ひずみの低減が可能
ケーブル(VS-FV/JV用)
・使用環境などに応じて、2種類のケーブルを用意
接続ユニット
DC電源(24V)からセンサ用5V電源を生成する
DINレールに取り付け可能なユニット
・24V入力/5V出力(センサ電源供給用)
・低出力インピーダンスバッファ
・RMS 出力(低域、高域の振動RMS値出力)
電源BOX
VS-AV、VS-BV専用センサ給電ユニット(評価専用)
・5V入力、センサ給電:3.3V
・コネクタ入力/BNC出力
ラインアップと主な仕様をまとめました。ハイライトの仕様値はその製品の特長的な仕様を意味します。
特長 | 小型・軽量 | 小型・低背・軽量 | 防水・低周波 | 防水・耐油 | |||
型名 / 外観 | VS-AV203 | VS-AV023 | VS-BV203 | VS-BV021 | VS-FV100 | VS-JV10A | VS-JV02A |
感度 | 20mV/m/s2 | 2mV/m/s2 | 20mV/m/s2 | 2mV/m/s2 | 100mV/m/s2 | 10mV/m/s2 | 2mV/m/s2 |
駆動電源 | 3.3VDC (3.0~5.5) 定電圧駆動 | 5.0VDC (3.2~5.5) 定電圧駆動 | |||||
共振周波数 | 30kHz以上 | 10kHz以上 | 30kHz以上 | ||||
周波数範囲 | 10Hz~15kHz | 1Hz~5kHz | 10Hz~15kHz | ||||
最小検知加速度 | 0.003m/s2 | ||||||
最大検知加速度 | 50m/s2 (5G) | 500m/s2 (50G) | 50m/s2 (5G) | 500m/s2 (50G) | 10m/s2 (1G) | 100m/s2 (10G) | 500m/s2 (50G) |
使用温度範囲 | -25℃~+75℃ | -25℃~+70℃ | -25℃~+85℃ | ||||
保護等級 | - | IP67(相当) *コネクタ勘合時 |
振動センサの評価・検討が簡単にできる評価キットを販売しています。当キットの使用例を収録した動画を公開しておりますので、ぜひご参照ください。
同梱品 | 型番 | 機能 | |
耐油型振動センサ | VS-JV10A | 振動計測 | |
標準ケーブル | VSC-100PURS4-M8D-01 | 電源、センサ信号ケーブル 10m | |
アタッチメント | VA-01 | センサマウント台座 (センサ共着済) | |
マグネットベース | VM-03 | 磁力による吸着設置 | |
マグネット保護シート | - | マグネット吸着保護 (測定時は外す) | |
取扱説明書 | 本書 | 使用方法 |
まとめ
トーキンの圧電式振動センサは、予知保全やインダストリアルIoTにおける振動検知用途として広く採用が進んでいます。その理由は、小型ながら独自技術により広帯域・高感度を実現し振動検知アプリケーションに広く対応できる仕様であること、また既存の機器や設備に実装する際の扱いやすさ、そしてコストパフォーマンスの高さにあります。加えて、様々な実証実験を行いデータや結果を公表するなど、ユーザーへの情報提供も積極的に行っております。
今後のインダストリアルIoTの活性化にともない、トーキンは「見えない振動を見える化する」をキーワードに多種多様な状況に対応できる振動センサを用意するなど、ユーザーニーズに応える製品開発を行って参ります。
振動センサ
広い周波数帯域で微小な振動を検出できるため、産業用IoTの予知保全および機器の振動制御に最適です。また、PLCやマイコンボード(機器への組込み)への接続、測定器等での波形分析にもご使用できます。
- 製品データシート
- 総合カタログ
- KEMET製品検索
- デザインツール
- オンライン購入
シリーズ
|
センサタイプ | 特長 | ケーブル | 駆動電源 (VDC) |
感度 (mV/m/s 2) |
最大検知加速度 (m/s 2) |
周波数範囲 (Hz) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
VSシリーズ
(下記4製品の総合データシート) |
–
|
–
|
–
|
–
|
–
|
–
|
–
|
VS-AV
|
VS-AV203
VS-AV023
|
小型・低背型
小型・低背型
|
直出し/3m
直出し/3m
|
3.0~5.5
3.0~5.5
|
20
2
|
±50
±500
|
10~15k
10~15k
|
VS-BV
|
VS-BV203
VS-BV201
VS-BV021
|
小型・低背型
小型・低背型
小型・低背型
|
直出し/3m
直出し/1m
直出し/1m
|
3.0~5.5
3.0~5.5
3.0~5.5
|
20
20
2
|
±50
±50
±500
|
10~15k
10~15k
10~15k
|
VS-JV
|
VS-JV10A
VS-JV02A
|
耐油・防水型
耐油・防水型
|
別売/3m~30m
別売/3m~30m
|
3.2~5.5
3.2~5.5
|
10
2
|
±100
±500
|
10~15k
10~15k
|
VS-FV100
|
VS-FV100
|
低周波・防水型
|
別売/3m~30m
|
2.9~5.5
|
100
|
±10
|
1~5k
|
オプション
シリーズ
|
タイプ | 型番 | 備考 |
---|---|---|---|
VS-AVシリーズ専用
|
マグネットベース
|
VM-01
|
Φ12×4mm
|
VS-JVシリーズ専用
|
マグネットベース
|
VM-03
|
Φ26×6mm
|
アタッチメント
|
VA-01
|
20mm×6mm
|
|
ケーブル
|
VSC-***PURS4
|
防水・耐油仕様
ケーブル長さ: 3m,10m,20m,30m |
|
VSC-***PVCV4B
|
柔軟仕様
ケーブル長さ: 3m,10m,20m,30m |
||
VS-FV100シリーズ専用
|
マグネットベース
|
VM-02
|
Φ26×6mm
|
ケーブル
|
VSC-***PURS4
|
防水・耐油仕様
ケーブル長さ: 3m,10m,20m,30m |
|
VSC-***PVCV4B
|
柔軟仕様
ケーブル長さ: 3m,10m,20m,30m |
||
VS-AV
VS-BV VS-JV |
接続ユニット
|
VB-2405B
|
24V入力,5V出力
各種フィルタ内蔵 |
VS-JVシリーズ専用
|
評価KIT
|
VS-JV10A-K01
|
・VS-JV10A
・VSC-100PURS4-M8D-01(10m) ・VA-01 ・VM-03 |
クロスリファレンス
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