世界初、高圧5.5VでAEC-Q200 Rev.E(2023年版)に準拠

車載グレード バックアップ用途スーパーキャパシタ

世界初、105℃対応スーパーキャパシタをラインアップ、高い信頼性と安全性を実現

当社は、世界初*1となる高圧5.5Vで車載向け受動部品規格AEC-Q200 Rev.E(2023年版)*2に準拠した車載グレードのスーパーキャパシタ、「FMシリーズ/FMUタイプ」および「FU0Hシリーズ」をリリースしました。トーキンのスーパーキャパシタは業界で唯一、水溶液系電解液を採用しており、高い信頼性と安全性が特徴です。

スーパーキャパシタは主に、パワーアシスト、ピークアシスト、電源バックアップなどの用途に広く利用されていますが、今回リリースした「FMシリーズ/FMUタイプ」および「FU0Hシリーズ」は、RTC(Real Time Clock)、ICやメモリー搭載のマイクロプロセッサシステムなどの低電圧直流電源の保持やバックアップが主な用途となり、先進運転支援システム(ADAS)、自動運転、インフォテインメントなど近年進化が著しい車載機器への展開を目的にAEC-Q200に準拠しました。

*1:2023年4月、トーキン調べ。
*2:AEC(Automotive Electronics Council)は、2023年の改版で、スーパーキャパシタの規格を策定し、追加。

世界初、高圧5.5V AEC-Q200準拠のスーパーキャパシタ
FMシリーズ/FMUタイプ:FMU0H334ZF(5.5V/0.33F)
15.0×14.0×9.0 mmモールドタイプ

FU0Hシリーズ:FU0H105ZF(5.5V/1F)
Φ21.5×15.0 mm CANタイプ

スーパーキャパシタとは

スーパーキャパシタは、固体電極と電解質溶液の2つの異なる相が接触することで電位差が生じる電気二重層という界面現象を蓄電に利用したコンデンサであり、電気二重層コンデンサの別称はこれに由来します。その用途には、パワーアシスト、ピークアシスト、電源バックアップなどがありますが、今回の新製品は電源バックアップが主用途であるため、以後電源バックアップ用途を前提に進行します。

以下に電源バックアップ用途における二次電池とコンデンサの特徴をまとめました。二次電池は高いバックアップ能力(高容量)を特徴としますが、コンデンサに比べ充電時間が長く、充放電に関する制約や寿命回数、実装方法の制限がともないます。それに対してコンデンサはこれらの制約がほぼないことが特徴ですが、バックアップ能力は劣ります。コンデンサとしてはスーパーキャパシタの特徴である大きな静電容量によって、バックアップ能力はアルミ電解より優れます。したがって、バックアップ能力と充放電の制約や実装に関するメリットのバランスを考えると、スーパーキャパシタは電源バックアップ用途において有用な選択肢であることがわかります。

二次電池 コンデンサ
ニッケルカドミウム(NiCd) リチウムイオン(Li-Ion) アルミ電解 スーパーキャパシタ
バックアップ能力
公害性 カドミウム
使用温度範囲 -20℃~+60℃ -20℃~+50℃ -55℃~+105℃ -40℃~+85℃
(車載グレードの例)
充電時間 数時間 数時間 数秒 数秒
充放電寿命 500回程度 500~1000回程度 無制限(*1) 無制限(*1)
充放電の制限 あり あり なし なし
フローはんだ付け 不可 不可 可能 可能
自動実装対応 不可 不可 可能 可能
(モールドタイプ、SMD)
安全性 液漏れ、破裂 液漏れ、燃焼、破裂、発火 発熱、破裂 ガス放出(*2)
  • *1:寿命は有限だが、適切な条件下での使用により、通常は搭載した機器の耐用年数を満足する寿命を有する。
  • *2:電解液(希硫酸)中の水分が水蒸気となり、ガスとして徐々に漏れるが危険はない。ただし、急激に最大使用電圧を超えるような電圧を印加した場合などは液漏れ、破裂に至る場合がある。

水溶液系スーパーキャパシタの構造と優位性

スーパーキャパシタの電解質溶液には、水溶液系(希硫酸など)と有機溶媒系(アセトニトリル、プロピレンカーボネイトなど)の2種類がありますが、水溶液系を採用したスーパーキャパシタを量産しているのはトーキンだけです。一般に、有機溶媒系の電解質溶液の採用は高電圧化やエネルギーの高密度化に有利で、水溶液系は信頼性と安全性、そして環境性に優位とされます。トーキンはターゲット市場とそのアプリケーションの特性を加味して、信頼性と安全性を軸とするスーパーキャパシタでの展開を図っております。


下図は水溶液系スーパーキャパシタの基本セル構造と、FMシリーズ/FMUタイプおよびFU0Hシリーズの構造の模式図です。


基本セルは、電極(活性炭+水溶液系電解液)、導電性集電電極、セパレータ、封止用合成ゴムからなり、端的言うとゴム封止構造となっています。この基本セルの蓄電最大定格は1.23Vで、5.5Vの場合は6枚の基本セルが積層された構造になっています。有機溶媒系に対する水溶液系スーパーキャパシタの優位性を以下に示します。

優位性① :衝撃に強い基本セルの封止構造

有機溶媒系スーパーキャパシタの基本セルは一般に、下図が示すように金属ケースをガスケットを介して機械的カシメ(圧着)によって封止されています。一方トーキンの水溶液系スーパーキャパシタの基本セルは、ゴムの架橋結合(高分子中の原子同士が直接あるいは他の原子を介して共有結合すること)により強い接着が得られるのが特徴です。この構造や材料の違いによって、機械的カシメに対して衝撃に強く、耐湿性に優れます。

優位性②:構造上から高い電圧マージンを持つ

5.5V構成を例にすると、水溶液系スーパーキャパシタは基本セル6枚を積層するので1セルあたりの蓄電圧は0.917Vで、基本セルの最大定格が1.23Vであることから、おおよそ30%ほどのマージンを持つことになります。有機溶媒系は2セル構造で1セルあたりの蓄電圧は2.750Vになり、基本セルの最大定格が3.0Vであるためマージンは8%程度になります。これは、構造上から決まるものであり、結果として水溶液系スーパーキャパシタの電圧マージンが大きいことから、安全面では優位となります。

優位性③:基本セルの耐湿性が高く、水分が侵入しても化学反応が起きない

水溶液系スーパーキャパシタはゴム材料封止のため衝撃に強く耐湿性が高いことは前述の通りですが、万一水分の侵入を許したとしてもセルあたりの電圧は0.917Vで、水の電気分解が起こる1.23V以下であるため、化学反応による破裂、液漏れなどは基本的に発生しません。有機溶媒系は衝撃などにより耐湿性が劣化すると水分が侵入し、加えてセル電圧が2.750Vであるため水の電気分解が起こり、化学反応によって破裂、液漏れなどが発生するリスクがあります。

世界初、高圧5.5VでAEC-Q200準拠のFMシリーズ/FMUタイプおよびFU0Hシリーズ

FMU0H334ZFおよびFU0H105ZFは、いずれも定格電圧5.5VでAEC-Q200に準拠した世界初の車載グレードスーパーキャパシタです。FMU0H334ZFは、業界で初めて105℃高温対応を実現したスーパーキャパシタです。また、FU0H105ZFは、業界最長寿命の85℃ 4,000時間を有します。これらの製品は、設計および材料の改良により、85℃/85%RH定格電圧負荷1000時間、高温負荷4000時間(FU0H)、同1000時間(FMU)に加えて、温度サイクル、衝撃、振動の各試験をクリアしており、高温高湿などの厳しい環境下でも安定した性能を発揮します。主な特長は以下の通りです。

FMシリーズ/FMUタイプおよびFU0Hシリーズの仕様と特長

2製品の基本仕様と特長を示します。詳細は「関連情報」に各データシートへのリンクがありますので、ご参照下さい。

品名 使用電圧 公称静電容量 等価直列抵抗(@ 1kHz) 電流(30分値) ケースタイプ
FMU0H334ZF 5.5VDC 最大 0.33F 25Ω 最大 0.5mA 最大 モールド
FU0H105ZF 5.5VDC 最大 1.0F 10Ω 最大 1.5mA 最大 CAN
  • AEC-Q200準拠(FU0Hシリーズは耐溶剤性を除く)
  • IATF16949認定工場にて製造
  • PPAP/PSWおよび変更管理実施
  • 広い使用温度範囲:-40℃~+105℃(FMUタイプ)
             -40℃~+85℃(FU0Hシリーズ)
  • 最大使用電圧:5.5VDC
  • 液漏れに対する高い信頼性
  • 鉛フリー、RoHS指令適合
  • 定期交換不要
AEC-Q200準拠の代表的信頼性試験と条件

AEC-Q200準拠のためには、規定の各試験をクリアする必要があります。以下に象徴的な試験と条件をまとめました。車載グレードFMUシリーズの定格最高温度は105℃、FU0Hシリーズのそれは85℃です。車載グレードではない一般品(トーキン製同等品)の場合は、例えば使用温度範囲:-25℃~+70℃、高温高湿試験条件:40℃/90%RH、温度サイクル:5サイクルと条件が緩い他、高温放置、衝撃、振動試験は適用外となっています。一般品に適用される試験や条件はメーカーによって違いがあり、前出の条件は一般品の中でも厳しい方でありますが、AEC-Q200に準拠するための試験や条件はさらに厳しいものであることは周知の通りであります。

項目試験条件
高温放置MIL-STD-202
Method 108
温度:定格最高温度
試験時間:1000 時間
高温高湿
(負荷)
MIL-STD-202
Method 103
温度:85℃、湿度:85%RH、定格電圧負荷
試験時間:1000 時間
耐久性
(高温負荷)
MIL-STD-202
Method 108
温度:定格最高温度、定格電圧負荷
試験時間:1000 時間
温度サイクルJESD22
Method JA-104
温度:-40℃ ⇔ 定格最高温度
さらし時間:30分
サイクル数:1000サイクル
衝撃MIL-STD-202
Method 213
Method 213 Condition C
振動MIL-STD-202
Method 204
周波数:10~2000Hz(5g’s)
試験時間:12時間
* FMD0H334ZFは1000時間
アプリケーション

FMシリーズ/FMUタイプおよびFU0Hシリーズは、ADASや自動運転などの車載機器の他、医療機器や産業機器などの高い信頼性と安全性が求められるアプリケーションでの、RTCやメモリーなどの電源バックアップ用途に開発しました。基本的にスーパーキャパシタはアルミ電解コンデンサに比べてESRが数百mΩ~100Ωと高いため、電源のリップル吸収などの用途には向きません。したがって、直流回路の電源バックアップのような二次電池と同様な用途が主体になります。

基本的な使用目的 供給電源 用途 対象機器
低電圧直流電源の保持やバックアップ 500µA以下 RTC、メモリーなどのバックアップ 車載機器、医療機器、産業機器

まとめ

トーキンの新製品、FMシリーズ/FMUタイプおよびFU0Hシリーズは、世界初となる高圧5.5VでAEC-Q200に準拠した車載グレードのスーパーキャパシタです。先進運転支援システム(ADAS)やインフォテインメントなどの車載機器をメインに医療機器や産業機器のRTCやメモリーなどのバックアップが主な用途となります。

トーキンのスーパーキャパシタは業界で唯一水溶液系電解液を採用しており、高い信頼性と安全性が特徴となっています。加えて、設計と材料の改良によりAEC-Q200への準拠を実現しました。105℃高温対応を実現したスーパーキャパシタFMシリーズ/FMUタイプや、業界最長寿命85℃ 4,000時間を有するFU0Hシリーズなど、AEC-Q200準拠のスーパーキャパシタの登場によって、車載機器設計者が確たる根拠のもとに安心してスーパーキャパシタを設計に採用でき、バックアップ用二次電池の置き換えなどの検討が容易になります。

今回の2製品のリリースをはじめとして、トーキンでは車載グレードのスーパーキャパシタのシリーズを拡充し、多様な要件に対応するラインアップを構築して参ります。

FU0Hシリーズ 車載グレード

スーパーキャパシタFU0Hシリーズは、電気二重層キャパシタ(EDLC)としても知られており、車載アプリケーションの電源バックアップを目的としています。
設計および材料の改良により、85℃/85%RH定格電圧負荷1,000時間と耐久性85℃4,000時間を実現しました。
このコンデンサは、IATF16949認証工場で製造され、PPAP/PSWおよび変更管理が行われています。

特長
  • 車載グレード品質
    85℃85%高温高湿負荷1,000時間保証
    85℃高温負荷4,000時間保証
  • IATF16949認証工場製造
  • PPAP/PSWおよび変更管理実施
  • 広い使用温度範囲 -40℃ ~ +85℃
  • 定期交換不要
  • 最大使用電圧 5.5 VDC
  • 液漏れに対する高い信頼性
  • 鉛フリー、RoHS指令適合
用途
  • スーパーキャパシタは、従来のコンデンサから電池にわたる特性を持っています。そのため、スーパーキャパシタを直流回路に使用すると、二次電池のように使うことができます。
  • このデバイスは、フラシュメモリーを用いた組み込みマイクロプロセッサシステムなど、低電圧用途の直流電圧保持用として使用するのが最適です。
  • スーパーキャパシタ車載グレードFU0Hシリーズは、高湿度や高温度などの厳しい環境下でも安定した性能を発揮します。

FMシリーズ FMDタイプ 車載グレード

スーパーキャパシタFMDタイプは、電気二重層キャパシタ(EDLC)としても知られており、車載アプリケーションの電源バックアップを目的としています。
設計および材料の改良により、85℃/85%RH定格電圧負荷1,000時間と最高使用温度85℃で車載グレードの品質を実現しました。
このコンデンサは、IATF16949認証工場で製造され、PPAP/PSWおよび変更管理が行われています。

特長
  • 車載グレード品質
    85℃85%高温高湿負荷1,000時間保証
    85℃高温負荷1,000時間保証
  • IATF16949認証工場製造
  • PPAP/PSWおよび変更管理実施
  • 広い使用温度範囲 -40℃ ~ +85℃
  • 定期交換不要
  • 最高使用電圧 5.5 VDC
  • 液漏れに対する高い信頼性
  • 鉛フリー、RoHS指令適合
用途
  • スーパーキャパシタは、従来のコンデンサから電池にわたる特性を持っています。そのため、スーパーキャパシタを直流回路に使用すると、二次電池のように使うことができます。
  • このデバイスは、フラシュメモリーを用いた組み込みマイクロプロセッサシステムなど、低電圧用途の直流電圧保持用として使用するのが最適です。
  • スーパーキャパシタ車載グレード・FMDタイプは、高湿度や高温度などの厳しい環境下でも安定した性能を発揮します。

スーパーキャパシタ

無制限かつ秒単位での充放電ができる大容量のキャパシタ。メモリーバックアップやパワーピークアシストへの応用を提案します。 電気二重層コンデンサ(スーパーキャパシタ)は数十ミリファラッド以上の非常に大きな静電容量を有し、充放電サイクル特性、急速充放電に優れ、また、広い温度範囲、環境に優しいという特徴をもつ蓄電デバイスです。

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シリーズ名
使用目的(目安) 供給電源(目安) 用途 対象機器例
FU0Hシリーズ
長時間のバックアップ 500μA以下 メモリー、
車載RTCバックアップ
車載機器、産業・計測・インフラ
通信機器、医療機器
FMシリーズ
FMDタイプ
長時間のバックアップ 500μA以下 メモリー、
車載RTCバックアップ
車載機器、産業・計測・インフラ
通信機器、医療機器

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